1 そもそも終活とは?

終活とは、「責任ある人生の終わりを迎えるための準備活動」の略です。
生前にお墓や葬儀社を選んだり、不要な物を整理・処分したり、医療・介護について備えたり、相続による財産の承継をスムーズにできるように事前に準備をする活動などが挙げられます。
司法書士は、相続発生後の不動産の名義変更や預貯金の相続手続などを業務として行っていますが、相続手続に非常に苦労する事案に遭遇することもあります。
これらの事案も、生前にきちんと準備をしておけばスムーズに相続手続ができていたものと思われます。

相続発生後の各種手続きを取り扱う司法書士の立場から、大切なご家族への財産の相続を円滑にするためにはどの様な準備をしたら良いかをアドバイスしたいと思います。

2 遺言を残さなかったら相続手続きはどんなことをするのか?

一般の家庭でも多いと思われる自宅不動産と預貯金の相続手続について説明したいと思います。
※遺言書を作成していなかった場合の手続を述べます。

戸籍を集める

遺言書がない場合、基本的には、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本(原戸籍、除籍)を集めます。戸籍謄本は、結婚や転籍、戸籍の改製などにより一般的には少なくても3通以上あります。他の市町村から本籍地を動かしている場合は、以前の本籍地があった市町村でも戸籍謄本などを取得しなければなりません。ご結婚されていてもお子さんがいらっしゃらない場合は、直系尊属(親など)や兄弟姉妹が相続人となるため、さらに戸籍謄本の収集は複雑になります。そのため相続手続で最も時間と手間がかかるのが、この戸籍謄本の収集なのです。

遺産の分け方を話し合う

戸籍謄本を集めて、亡くなった人の相続人が誰なのかを確定させたら、次に、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。これを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作って相続人全員が実印で押印します。

しかし、話し合いがうまく行かず、この遺産分割協議がまとまらないと、不動産や預貯金の相続手続ができずに相続人は非常に苦労することになります。場合によっては、今まで仲の良かった親族関係にヒビが入ってしまうこともしばしばあります。
例えば、すでに両親は他界し子どもがいないご夫婦の場合、夫が先に亡くなったとしたら、夫の兄弟姉妹が相続人になります。この場合、妻は夫の兄弟姉妹と遺産分割の話し合いをしなければなりません。これは遺産分割協議がまとまらない可能性の出てくる事例だと思います。
また、相続人の中に、行方不明の人、認知症や障がいにより判断能力が不十分な人、未成年者などがいる場合は、家庭裁判所での諸手続が必要になります。そして、家庭裁判所が関与した場合、対象となった相続人に法律で決められた相続分(法定相続分)程度の財産を取得させる内容の遺産分割にするように求められる可能性が高いです。

法務局(登記所)や銀行で相続手続をする

戸籍謄本を集め、遺産分割協議書への押印ができたら、不動産の相続登記をしたり、銀行で預貯金の相続手続をします。ここで注意したいのは、銀行での相続手続です。1つの銀行につき2時間かかることもよくありますし、「書類を確認しておきますので、後日、来てください。」と言われることも珍しくありません。銀行での相続手続は時間が非常にかかると思っておきましょう。したがって、少額の残高の銀行預金は、生前に解約して他の口座にお金を移すかどこかの口座にまとめた方が、相続の手続は楽になります。

3 終活として遺言書があれば… 

相続が開始した後の大量の戸籍謄本を集める、遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)などの手続を省くためには、遺言書を作っておくと良いでしょう。遺言書を作っておけば、亡くなった人の生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本を集める必要はなくなります。亡くなった人の戸籍としては、亡くなったことが分かる最後の戸籍だけで済みます。そして、遺言書に遺産の分け方について記載してありますので、相続開始後に相続人間で分け方を話し合う必要がありません。(ただし、遺留分という相続人に最低限認められた権利を侵害する内容の遺言だと、もめる可能性があります。)
遺言書を作ることによって、集める戸籍謄本も少なくなり、遺産分割協議は原則不要となるため、不動産の相続登記や金融機関の預貯金の相続手続がスピーティーにできます。
これは、遺言書がない場合に比べてかなり大きなメリットといえます。

①遺言書は公正証書遺言がおすすめ

主に活用されている遺言の形式として、自分で書く『自筆証書遺言』と、公証人が作成する『公正証書遺言』の2つがあります。自筆証書遺言は、自分で書けば良いので費用をかけなくて済むというメリットがありますが、厳格な遺言書の形式を満たしていないと無効な遺言となってしまいます。自筆証書遺言が無効であると、結局、戸籍を全部集めて、相続人全員で遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成のうえ押印(実印)をもらうという手続が必要になってしまいます。これが自筆証書遺言の大きなデメリットです。

なお、自筆証書遺言の場合は、相続開始後に家庭裁判所での手続(これを『遺言書の検認』といいます)が必要となります。自筆証書遺言に対して、公証人の作成する公正証書遺言は、この検認手続きは不要ですので、相続開始後にスムーズに手続ができます。また、公証人が関与するため、公正証書遺言は、形式を間違えて無効になるという危険性を防ぐことができます。一般の方が遺言書を作成する際に間違いやすい箇所として、遺言書に記載する土地や建物について普段使用している住所で記載してしまっていることがあります。土地や建物は、住所ではなく地番や家屋番号で記載する必要があります。
費用はかかってしまいますが、確実な相続手続を考えると、公正証書遺言を選ぶことをお勧めいたします。

遺言書を作った方が良いケース

一般的なケースでも遺言書を作成することによって、相続手続はかなりスムーズになりますが、以下の様なケースでは遺言書作成の必要性が大幅に高まると思われます。

① 子どもがいないので配偶者(夫または妻)に全財産を相続させたい。
② 前妻との間に子どもがいるが、現在の妻や子どもとは面識も交流もない。
③ 相続人の中に連絡が取れない人がいる。
④ 法定相続人以外の人(内縁の妻、息子の妻、孫、甥姪)などに財産をあげたい。
⑤ 妻には法律の決まりよりも、もっと多くの財産をあげたい。
⑥ 介護をしてくれた特定の子どもに多くの財産をあげたい。
⑦ 会社を経営しているので、後継者である長男または二男に必要な財産を相続させたい。
⑧ 相続人になる予定の人の中に認知症や障がいで判断能力が不十分な方がいる。
⑨ 相続人になる予定の人の中に未成年者がいる。

上記①の例でいいますと、相続人が配偶者と兄弟姉妹のみの場合を想定しておりますが、兄弟姉妹には遺留分がありませんのでこのような遺言も可能です。
この場合にもしも遺言書がなく、兄弟姉妹が法定相続分どおりの権利を主張してきた場合は、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4が法定相続分となります。(実際には権利を主張しない、または、話し合いでまとまることもありますが、場合によっては裁判所・弁護士をまじえ調停まで必要になることもあります。)

司法書士は、不動産の相続登記や預貯金の相続手続(司法書士法施行規則31条業務)を通じて、相続開始後に手続が煩雑になってしまう様々なケースを見てきています。
生前にしっかりと責任のある準備をすることによって、残された大切なご家族への負担と煩雑な手続を回避することができます。

4 最後

終活のアドバイザーとして、司法書士に相談してみてはいかがでしょうか?
なお、遺言書作成のタイミングで、亡くなった後のお葬式・お墓などについてしてほしい事(死後事務委任契約)や、将来、認知症になった時に備えて、任意後見人になってほしい人や、任意後見人にしてほしい事(任意後見契約)を決めておくことも可能です。

終活・相続・遺言の相談は福山市のたかき司法書士事務所へお気軽にご相談ください。

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